2011年10月30日 読売新聞
B型肝炎ウイルスの感染歴がある人が、免疫抑制薬や抗がん剤などの治療を受けると、ウイルスが再活性化することが問題になっている。
厚生労働省は、早期発見に必要な遺伝子検査や治療薬について保険適用とする通知を出したが、様々な病気の治療に影響する可能性があるため、医療現場での周知徹底も大切だ。
B型肝炎ウイルスの感染歴のある人は中高年に多く、50歳以上の約2割、全国で1000万人以上いるとみられる。うち血液中にウイルスのたんぱく質(抗原)がある持続感染者(キャリアー)は100万~130万人。感染歴があるかどうかは、血液中のウイルスに対する免疫物質(抗体)の有無を調べるとわかる。
以前から、キャリアーが血液がんやリウマチなどの治療を受けると、免疫が低下し、ウイルスが再活性化する例が報告されていた。だが最近、治ったとされた人でも、病気の治療で免疫が下がると再活性化することがわかってきた。いったん感染すると微量のウイルスが肝臓に残るためだ。
頻度は低いが重症化する人もいる。2004年から09年に感染歴はあるが治ったとされた人のうち、悪性リンパ腫13人、白血病2人、リウマチ、多発性骨髄腫、乳がん各1人の計18人が持病の治療をきっかけに劇症肝炎を起こして死亡した。
微量のウイルスを測る遺伝子検査を定期的に行い、早期に検出して抗ウイルス薬を服用すれば増殖は抑えられる。厚労省は先月、必要な検査や治療を保険適用とする通知を出した。
免疫抑制薬 肝臓専門医と連携急務
問題は、どんな治療でどの程度再活性化が起きるか、はっきりしないことだ。
元々は臓器移植の時などに使われていた免疫抑制薬はここ数年、難治性の皮膚病や消化器病、がんの治療などに広く使われるようになった。複数の抗がん剤を組み合わせた強力な治療で免疫が落ちることもある。リウマチでも、より免疫抑制作用のある新薬や新治療法が普及するなど、様々な病気の治療で再活性化が起きる可能性はある。
だが、肝臓病を専門としない医師たちへの周知はまだ十分とは言えない。
昨年2月、東北6県のリウマチ専門医のいる318施設に行った調査では、72施設(回収率23%)の回答中、感染歴の有無を調べる抗体の検査を全く実施していないと答えた施設が54%、キャリアーかどうかを調べる抗原の検査をまったく行っていない施設は32%あった。
「感染症の検査はプライバシーの問題があり、難しい側面もある。ただ、この1年で医師の意識も変わり、現在は検査をしている施設は大幅に増えているようだ」と調査にあたった東北大血液・免疫科准教授の石井智徳(とものり)さんは話す。
関東地方の男性(65)の妻は、3年前、急性白血病の治療が成功した直後に劇症肝炎を起こして死亡した。妻はB型肝炎ウイルスのキャリアーだったが、抗ウイルス薬などの治療は受けなかった。「肝炎ウイルスの対策があれば、もう少し生きられたかもしれない。同じことが繰り返されないようにしてほしい」と話す。
鹿児島大准教授の井戸章雄さん(肝臓内科)は「どんな時に再活性化が起きやすいかなど、現在調査中だが、今の段階ではあらゆる診療科で注意が必要。ぜひ肝臓専門医と連携をとってほしい」と話している。(館林牧子)
B型肝炎ウイルス 出生時の母子感染や注射器の使い回し、性交渉などで感染する。妊婦健診で母親に感染が見つかった場合、乳児にワクチン接種が行われるようになり、母子感染はほぼ防げるようになった。自然に治ることも多く、本人が感染したことを知らない場合も多い。
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